大判例

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東京高等裁判所 平成2年(ラ)407号 決定

一 抗告人は「1 原決定を取り消す。2 相手方等は、原決定別紙物件目録記載の使い捨てカイロを製造、販売してはならない。3 前項記載の物件及び半製品に対する相手方等の占有を解いて、管轄地方裁判所執行官に保管を命ずる。この場合執行官はその保管にかかることを公示するため適当な方法をとらなければならない。」との裁判を求めた。

本件抗告の理由は、別紙抗告の理由(一)及び別紙抗告の理由(二)記載のとおりである。

二 当裁判所は、本件カイロが本件発明の技術的範囲に属しないものであり、本件カイロが本件発明の技術的範囲に属することを前提とする抗告人の本件仮処分申請は理由がないと判断するが、その理由は、次のとおり付加する他、原決定の、「三 当裁判所の判断」の項のとおりであるから、これを引用する。

1 別紙抗告理由(一)中の一について

相手方日本パイオニクス株式会社が、本件カイロの製造にあたつて使用している鉄粉が、本件特許権の侵害を回避するため、製鉄メーカーがカイロ用鉄粉としてことさらに製造販売するようになつた酸化第二銅、二酸化マンガン、四三酸化鉄、その他酸化鉄類の一種または二種以上混入されている鉄粉であること、相手方等が本件カイロの製造に使用する鉄粉そのものに四三酸化鉄等の酸化物をことさらに混入させていることを認定するに足りる疎明はない。

2 別紙抗告理由(一)中の二及び別紙抗告理由(二)について

原決定が、「原材料である鉄粉が製造工程又は製造後使用前に自然に酸化したとしても、実施に際して必然的に生起する自然現象に過ぎず、」と判断した趣旨は、本件カイロのように、鉄の微粉末に塩化物と水を含ませた活性炭を加え通気性のある袋にいれた発熱体は、本件特許の出願前公知であるところ、右のような構成の本件カイロにおいて、塩化物と水を含ませた活性炭が加えられることにより鉄粉が製造工程又は製造後使用前にそれ以上人為を加えることなく酸化したとしても、本件特許の出願前公知であつた構成の発熱体の実施に際して必然的に生起する現象であつて、「二酸化マンガン、酸化第二銅、四三酸化鉄のうち一種または二種以上」の酸化剤を、主材である鉄粉とは別個に、酸化助剤・酸化促進剤として発熱組成物中に混合するという人為的行為とは区別される現象である、との趣旨であることは、決定全体を通読すれば明らかであり、かつ、その判断に誤りはない。

抗告人の主張は採用できない。

3 別紙抗告理由(一)中の三ないし五について

本件発明の、「二酸化マンガン、酸化第二銅、四三酸化鉄のうち一種または二種以上を適宜混合し」という構成要件は、これら酸化剤を、主材である鉄粉とは別個に、酸化助剤・酸化促進剤として発熱組成物中に混合することを意味する旨及び本件カイロにおいて、塩化物と水を含ませた活性炭が加えられることにより鉄粉が製造工程又は製造後使用前に酸化したとしても、「二酸化マンガン、酸化第二銅、四三酸化鉄のうち一種または二種以上を適宜混合し」という構成要件を充足することにならない旨の原決定の認定判断は、いずれも正当であり、抗告人の主張は採用できない。

三 よつて、本件抗告を棄却することとする。

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